妖怪 信州の鬼伝説
口承の鬼 ~信州の鬼伝説~
口伝えのの、つまり「口承」の現場では妖怪はいかに語られているのだろうか。
一例を『信州の伝説』という資料集に見てみたい。
この本は百数十件もの長野県内の伝説を、柳田國男『日本伝説名彙』の分類に従って並べている。
やはり「鬼」の出番は信州でも多い。
佐久市の貞祥寺にある「鬼岩」は、和尚と鬼の技比べの跡だといわれている。
その昔、徳忠和尚が人々を脅かした鬼を懲らしめ、法力で腕をもいでしまつた。
鬼がしきりに詫びるので和尚が腕を返すと、鬼はちぎられた腕を付け直し、この通り治りましたと大きな石を持ち上げて見せた。
その石が今の鬼石だ、という伝説である。
そのほかに鬼の伝説としては、鬼が石に跡をつけた「鬼の足跡石」「鬼の爪跡石」が四つも紹介されている。また、戸隠村の「一本松」は豪傑・平惟茂が鬼女紅葉を退治した、その記念に植えた松とつたえられているそうである。