幕府顧問フランス人ロッシュ
幕府顧問 フランス人ロッシュ
ロッシュ持病のリュウマチの治療のために、熱海温泉に滞在していた。大政奉還の知らせが京都から伝えられたとき、寝耳に水の話に仰天した。ロッシュは詳細を聞くためにすぐに江戸へ向かった。
江戸につくと、慶喜からロッシュ宛のの親書が届いていた。そこには「今般、政権を朝廷に返し、国論を一つにまとめ、広く衆議を尽くし、海外に対しても永久の交わりを尽くしたい」と慶喜の理想論が述べられていたに過ぎなかった。
実に安易な文章といわざるを得ない。緊迫感がまるで欠けている。
大政奉還後、自分がが日本の宰相になれる保証はどこにあるのか。
ロッシュは、慶喜の楽観主義に驚き、自体を深刻に憂慮した。
「薩摩、長州が慶喜の考えを受け入れなかった場合は、どうなるのか」ロッシュは外国事務総裁の小笠原長行(ながみち)に聞いた。その場合は慶喜が江戸に引き上げ、政府の中枢を再建。関東の支配者の地位を確保し、北方のすべての大名、二百余の譜代大名、八万の旗本と、陸海軍との国の財政を意のままに動かす。外国に対しては条約を尊重し、貿易の機会をいっそう拡大し、再び権力を自分の手中に収めると、小笠原は説明した。
しかし、この説明も絵にかいた餅だつた。江戸では兵を京都に送ること一つで、大混乱に陥っているではないか。こうなれば当面の課題は、京都にいる慶喜の判断である。「数世紀にわたって、神政のなかに閉じこもってきた朝廷に、日本の政治ができるとは思えない。朝廷は二、三の大名たちの傀儡にすぎないのだ。慶喜は戦うことによってしか、政権を自らの手に取り戻すことはできない。私はすぐに状況する。
ロッシュはそういって、慌ただしく船に乗った。
『幕臣たちの誤算』星亮一著より
慶喜の実母が、公家の出身とはいえ、ほんと将軍としての自覚欠如。有能な幕臣が多数いたのでは?
やはり、苦労していないボンボンでしかなかったかな。